今回はお肌ケアには欠かせない美容成分である「レチノール」について、成分の効果や特徴を細かく解説していきます。
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レチノールとは?
日本では厚生労働省から「シワを改善する効果」を承認されており、アメリカの皮膚科学会では「皮膚科医が推奨するスキンケアの成分」だと紹介しています。
実際に資生堂などの大手企業が研究をしている中、実施されたある研究では、レチノールを使用すると約8週間で目に見えてお顔のシワが減少し、さらに約4週間使用すると首元のシワまで減少する結果が出ています。
さらに、レチノールの使用を2週間程度中止しても、シワの数はもとに戻らず減少したままでした。
レチノールが「シワが戻らないような状態にしている」ことがわかる結果になりました。
そもそもレチノール(Retinol)の成分はビタミンA(ビタミン誘導体)の一種ですが、レチノール自体の数はおよそ2,000種類を超え、その誘導体の総称を「レチノイド(Retinoid)」と言います。
ビタミンAは脂溶性(油に溶けやすい性質)の抗酸化ビタミンで、主な役割としては皮膚や粘膜を健康な状態に保ち、抵抗力を高める働きがあります。
さらに、レチノールは種類によって性質が異なり、「純粋レチノール」は熱や空気、光、酸などに対して非常に不安定な成分ですが、「パルミチン酸レチノール」や「酢酸レチノール」は安定性を高めているので、皮膚刺激性を低減させているので「安定型ビタミンA誘導体」として、多くの化粧品に配合されています。
ただ、ビタミンAは人の体内では合成されないため、食べ物やサプリメントから補う必要があります。
ウナギや豚レバー、バターといった動物性食品に多く含まれ、摂取したビタミンAは小腸で脂肪と共に吸収され、心臓や腎臓、肺などの各組織に運ばれますが、そのほとんどは肝臓に蓄えられます。
レチノールの効果
次に具体的なレチノールの効果をご紹介していきます。
1.肌のハリ・弾力
肌のハリや弾力を改善する上で、2つの効果的なルートがあり、それが「表皮からの改善」と「真皮からの改善」です。
表皮からの改善
レチノールの働きとして、まず表皮にてヒアルロン酸の生成を促します。
ヒアルロン酸が生成されることによって、表皮にある角質層での水分量が増すため、肌の柔軟性を高めることが期待できます。
また、角質層が潤うことで乾燥を防ぐことも可能です。
実際にあった研究では、レチノールを取り入れた後、48時間後にはヒアルロン酸が生成されていることが確認されています。
真皮からの改善
表皮に働きかける以上に、レチノールはもっと深部の真皮層にも働きかけます。
真皮層に存在しているコラーゲンをさらに生成し、コラーゲンの密度を高めることで、肌の弾力の改善に期待が出来ます。
2.シワの改善
レチノールに備わっている働きとして、皮膚表面に存在している「表皮細胞(角化細胞)」の分裂速度を速める効果があります。
分裂の速度が上がることで、表皮細胞(角化細胞)の数が増加し、皮膚が厚くなります。
シワが出来る理由の1つに「皮膚が薄くなる」というものがあります。
この加齢による変化を、レチノールの分裂速度を速める効果、つまり「表皮を厚くする効果」によって「シワを目立たなくさせる」ことにレチノールが使用されることがあります。
また、初めにお伝えしたようにレチノールはビタミンAの一種であり、ビタミンAはビタミンCやビタミンEと共に活性酸素の働きを抑える作用を持つ抗酸化ビタミンです。
つまり、これから出来る可能性のあるシワ予防に効果的です。
活性酸素とは?
活性酸素の役割をご存知でしょうか?
呼吸によって取り込んだ酸素の一部分が、通常の酸素よりも活性化した状態の酸素のことを指し、酸素を必要とする生き物の場合、活性酸素は自然に発生するものです。
取り込んだ酸素は血液によって各細胞へ運ばれ、細胞内のミトコンドリアが取り込んだ酸素を使ってエネルギーを生成する「エネルギー代謝」が行われます。
このエネルギーを生み出す時に、取り込んだ酸素2〜3%が活性酸素として発生すると言われています。
その内の白血球から発生した活性酸素は「細胞伝達物質」や「免疫機能」としての働きがあり、体の働きを正常に保つ上で、不可欠な要素です。
ただ、この活性酸素のデメリットとして「強い酸化作用」があります。
私たちの体には本来この酸化作用から体を守る抗酸化機能が備わっています。
その機能が外部的な何らかの要因によって、活性酸素の抑制に間に合わず、バランスが崩れることで活性酸素が正常な細胞を攻撃し、結果として「老化・がん・シワ・シミ・糖尿病・動脈硬化」などの生活習慣病の原因になってしまいます。
外部的な要因として一般的によく例に上がるのは「食品添加物・たばこ・アルコール・職場や家庭内でのトラブルやストレス・激しい怒りや悲しみ」です。
3,シミの改善
紫外線や摩擦によって出来てしまったシミの改善にもレチノールは効果的です。
シミの原因であるメラニン色素の蓄積は、例えば紫外線で言うならば、紫外線を過剰に浴びることで体を守る防護機能として、表皮のメラノサイトがメラニン色素を生成し、そのメラニン色素が滞留することが原因です。
レチノールを表皮に与えることで表皮の細胞分裂が活性化する性質を活かして、肌のターンオーバーを促し、シミの改善をしていきます。
しかし、すでに表皮から真皮層部分に色素が落ち滞留している場合、いわゆる恒久的になってしまったシミ「老人性色素斑」や生まれながらにして存在している「先天的なアザ」などには効果がありません。
4.ニキビ・毛穴詰まり
シミの改善と同様に、肌のターンオーバーを促すことでニキビ跡の修復を手伝う効果が期待できます。
また、ターンオーバーを促すことで、古い角質が溜まり、毛穴が詰まったりする原因を取り除けるので、これから出来るニキビにも効果的です。
さらにレチノールには、炎症している部分の症状を抑制したり、腫瘍を抑制する効果があります。
ニキビの症状の状態に左右されることなく使用できますが、使用し過ぎると逆に炎症を起こす場合があるので注意が必要です。
レチノール化粧品
レチノールが含まれているお化粧品は規制が厳しく、アメリカでシワの改善薬として使用されている「トレチノイン」と比べると、レチノールの効果は100分の1程度しかありません。
トレチノインとは?
トレチノインとはレチノールが体内にて酸化することで変化した物質です。
レチノールは摂取後、トレチノインに変化することによって効果を発揮すると言われており、変化後はレチノールの約50〜100倍の効果と言われています。
そのため、レチノールを配合している化粧品を市販で購入するよりは、医師に診察をしてもらい、医薬品としてレチノールを配合している化粧品を入手するのが効果的です。
ただ、市販薬も効果が全くないわけではないので、保湿クリームとして、今後の予防として使用するのがおススメです。
レチノール配合化粧品はいつ使う?
主に市販薬の場合、ビタミンAは脂溶性ビタミンのため、乳液またはクリームの代わりや、その後に使用します。
また、レチノールは不安定な成分なので、朝より夜にお顔へ与えるのがおススメです。
市販薬でも「夜用」と記載されているものが多いです。
詳しい理由としては、ビタミンAは細胞膜、つまり皮膚や粘膜を保護する役割があります。
日中はどうしても乾燥や紫外線などのダメージを表皮や真皮の細胞は受けてしまうため、そのダメージを修復し、正常な肌へ導くと考えられています。
お肌の構造上、真皮までお化粧品の成分が届くことはほぼありません。
夜のお化粧品の役割として大切なのは「保湿によって表皮の水分量を正常な状態に戻すこと」です。
日中受けたダメージによって傷付いたお肌を回復する手助けとして、修復効果のあるビタミンAなどが配合されているお化粧品を選びます。
レチノールを含む食品
現代社会の中でレチノールが不足することはほとんどありません。
さらに言えば、レチノール、つまりビタミンAは脂溶性のため、体内に貯蓄されやすく過剰摂取には注意が必要です。
先にお伝えしたウナギや豚レバー、バターと言った動物性の食品に多く含まれています。
他にも鶏レバーやあんこうの肝等に多く含まれますが、苦手な方は海藻ののりにも含まれているので、食べられる食品をバランス良く摂取しましょう。
レチノールの注意点
お肌や細胞に欠かせないレチノールですが、過剰摂取以外にも注意すべき点がいくつかあるため、安全に取り入れるためご自身の体調や肌質と合わないと感じた場合はすぐにかかりつけ医にご相談ください。
敏感肌の方
レチノールを高配合しているお化粧品等はかなり刺激が強いものが多いです。
真っ先に出る症状としては「赤み」が当てはまり、医師に処方してもらう薬品はもちろんですが、市販薬でも特に敏感肌の方は赤みが出やすいです。
赤み以外にも「かゆみ」や酷い場合は赤み以上の炎症が起き痕になるようなかぶれを引き起こす場合もあります。
化粧品の保管方法
レチノールの成分自体とても不安定な性質があるため、光や熱、酸や空気等の影響を受けやすく、薬品や市販のものが茶色の瓶に入っていたり、スポイトでお肌に直接乗せるもの、プッシュ式の容器に入っているものが多いです。
そのため、ご自身の使用頻度や使用方法に合わせて商品を購入する必要があります。
ただし、どんな容器であっても可能な限り開封後は速めに使い切り、紫外線や光、熱を避けて、商品の注意事項をよく確認してから使用するようにしましょう。
レチノール反応(ビタミンA反応)
国で認められている程効果がある成分のレチノールですが、使用する時の注意する点として「レチノール反応(ビタミンA反応」というものがあります。
別称で「レチノイド反応」とも言います。
レチノール反応(ビタミンA反応)とは、ビタミンAが不足してる状態でレチノールを含むお化粧品を使用したり摂取することで、引き起こされる症状で、具体的な症状は下記の通りです。
・お肌の赤み
・乾燥
・かゆみ
・皮むけ
・ヒリヒリする感覚
このレチノール反応は正常なお肌の生理反応なので、お化粧品や摂取によって十分なビタミンAが貯蓄されると、次第にレチノール反応も落ち着いていきます。
レチノールを使用し始めてから約3〜6週間程度でレチノール反応は落ち着くため、それ以上長引く場合は一旦使用を中止しかかりつけ医やお化粧品を購入したお店やサロンに相談しましょう。
レチノールと紫外線の関係
レチノールを使用する上で、特に注意が必要な点はレチノールと紫外線の関係性です。
まず、紫外線には波長の長さが異なる「A波(UVA)」、「B波(UVB)」、「C波(UVC)」があり、A波から長くC波に至っては地球のオゾン層に阻まれ地表には届きません。
この紫外線の内、「A波(UVA)」は、部屋の中にいても窓ガラスがUVカット加工でなければ窓ガラスを通り抜け、お肌の表面も通り抜けお肌の奥「真皮層」にまで届いてしまいます。
A波が届くことで、真皮層に存在するエラスチンやコラーゲン繊維を破壊してしまうので、お肌のハリや弾力がなくなり、シワやたるみの原因になります。
また、B波がお肌の表面(表皮)に届くことで、お肌の表面でお肌を守っているメラノサイト(色素細胞)の働きを活発にさせてしまい、メラニンを大量に生成しシミや皮膚がんの原因になります。
B波はエネルギーが強いため、表皮の細胞の遺伝子を傷付けやすいです。
いわゆる「日焼け」の中で黒くなるのはB波で、赤く炎症を起こしている状態はA波の影響です。
ここからレチノールと紫外線の関係についてお伝えしますが、おおまかに2種類の働きがあります。
「レチノールは紫外線を吸収する」働きがある上で、「レチノールが紫外線を吸収することで天然の日焼け止めになる場合」と「レチノールを使用することでバリア機能が一時的に低下し紫外線への感受性が高まりトラブルが引き起こされる場合」です。
天然の日焼け止めの場合
十分お肌にレチノールが貯蓄されている時に、紫外線を浴びることで、レチノール自体が犠牲になり破壊されることで紫外線の真皮層への侵入を防ぎます。
効果的にはSPF値20の日焼け止めと同等だと言われています。
バリア機能低下により感受性が高まる場合
レチノールを使用し始めてレチノール反応を引き起こしている時や、まだ十分なレチノールがお肌に貯蓄されていない時に紫外線を浴びてしまうと、紫外線の吸収を加速させてしまい、日焼けしやすくなる以上にお肌トラブルを引き起こしやすくなります。
この場合日焼け止めを塗る以上に、バリア機能が低下しているので乾燥対策も行う必要があるため、より注意が必要になり、紫外線対策をしっかりと行いましょう。
最後に
ここまでお伝えしたように、レチノールは効果が実感できるまで、また効果を持続させるためには時間がかかります。
理由としては、そもそもお肌のターンオーバー自体が約28日かかるためです。
すぐに効果が出ないからと言って、使用を中止したりお化粧品を変更してしまうと、また振り出しに戻る、ということを繰り返してしまうので「即効性がないこと」、「コストがかかること」、「副作用が先行すること」、「注意点を守ること」を理解した上でレチノールを使用しましょう。